starressのブログ

日々の、出来事を何となく綴りたいと思います。

家出娘とオリビアのフィジカルと。

ピンポーンと家の呼び鈴が鳴り

玄関に行くと、高校の同級生だった

博巳が立っていた。

スラリとした身なりに、

服装もお洒落で、

ホストみたいな雰囲気だ。

博巳の後ろには約40年前は、

不良しか染めないと思われた

茶髪の小柄な女性が立っていた。

目が大きくて、猫みたいな視線を

送って来た彼女の名前は、

ひろ子と言った。

真っ赤な唇が愛らしくて、

回りの世界が急に明るくなった

感じがした。


『久しぶりだな、どうした?』 

と聞いたら、


『実は頼みがあってな..』


と意味深な雰囲気だった。


二階に二人が上がると、

彼女は下を向いたまま、黙っていた。

ひろ子は16歳で、何でも

理容美容専門学校に通う生徒らしく、

全寮制の世界の中でいじめに遭って?

逃げ出して来たらしい。

博巳は最初、自宅に匿っていた

らしいが、親と住んでる為に、

部屋にずっと置けずに、

他の知り合いの家を訪ねていたらしい。

しかし、ひろ子は隣の県から

来ていた為に、誰も知り合いは居ない。

博巳の知り合いと言えば、

半分暴走族上がりの連中と

暴走族なのかな?

仲間を信用していたらしいが、

そんな仲間に、ひろ子を一晩泊めたら、

当然体を要求されて来たらしい。

ひろ子は拒否したが、

キスはされたと言っていた.....

当然そこには、もう頼めないと

言う事で、

俺の所に来たのだった。


『信用出来る奴はお前しか

居ないから

頼む!ひろ子を一晩だけで

いいから、泊めてくれ!』


『ちょっと待て!一応俺も男だぞ?』


『大丈夫だ、お前なら絶対に裏切らない奴だって知ってるから!』


『お前はそんな事する奴じゃない!』


上手く乗せられた気がするが、

ひろ子の美貌を見てたら、

一晩だけなら....

まあ、いいかって思い、

泊める事にしたよ。

ひろ子は不安そうな、

面持ちで、ぎこちなく


『お願いします....』


と頭を下げた。

3人でしばらく話した後に、

博巳は帰って行った。

不安そうに、見送るひろ子に、

『大丈夫だよ、俺の部屋は

2つに分かれているから、

半分好きに使いな』


『静かにしてれば問題ないからね』

とリラックスする様に促した。


『ありがとう..』


ひろ子はにっこり笑っていたが

不安で一杯な顔してたな....

ひろ子は、スタイルも良くて、

19の俺から見たら天使の様に見えた。


『博巳の事が好きなの、

彼の事しか考えられないの』


その真っ直ぐな瞳に

二人の為に出来る事を

してあげよう.....って

思った。


夜中に


『みんな寝てしまったけど、

シャワーとか浴びる?』

と、聞いたけど、


『いい!』


ときっぱり断られた。


シャワー浴びたら、襲われるとか

思ったのだろう...

そんな断り方だった。

ちゃんと布団も敷いてあげて、


『ゆっくり眠りなよ』

と電気を消して、隣の部屋に俺は

姿を消した。


翌朝


自分は家族と普通にご飯を食べて、

二階に戻り、アコーディオンカーテン

を、開けて布団畳んで静かに

座ってるひろ子を見て、


『あ、そう言えば、いたんだね

すっかり忘れていたよ~』

『居るの忘れて、熟睡してたよ』


と知らない振りをしていたら


『酷い‼ちゃんと居るわよ❗』


とほっぺを、膨らませた。


隣に色白で、胸も可愛く膨らんで

ウェストもくびれて、猫みたいな

彼女が夜中に眠っているなんて、

考えたら、眠れる訳ないだろうが!

おまけに前日、キスを強要されて

キスされたんだから、どんな風に

されたの?

ほんとにキスだけなのか?

それ以上の事、されたりしてないのか?

なんて考えたら健康的な19歳の夜に、

熟睡出来る訳ないだろうが~!


だが、俺が気にもかけてないと

悟ったら少し安心した様だったね。


博巳は仕事で、夕方しか来れないので、

ひろ子に

『気分転換に出掛けるか?』

と聞いたら、


『うん』


と無邪気な顔でニッコリ

笑った。

まあ、俺は事故で入院してて、

今は就活に向けて活動しようか...

と言う所で、

自由時間は限りなくあった。


外は天気も良くて、爽やかな青空だ。

空気も済んでいて、美味しい!


姉の車

"スバルのレックス"

を借りて、祖母に気付かれない様に

こっそりと出掛けた。


『お腹空いたよね、何か買いに

スーパー行こうか?』


『いいの?』


『ありがとう....』


車のカセットで

オリビアニュートンジョンの


"フィジカル"

を聞いた。

1982年、オリビアニュートンジョンの

フィジカルは大ヒットし、

オリビアのMTVは躍動的で魅惑的だった。


『あたしこの曲好き!』


首を振ってリズムを取る姿が、可愛くて、


『いい曲だよな~』


って笑い合っていた。



16才だが、タバコを吸う姿が、

様になっていてフィルターに

ついた真っ赤な口紅の後が、

妙に艶かしくて

ドキドキしてしまっていた.....



曲はアルバムの

センチメンタルなメロディーの....


"シルバリーレイン"

がかかると、


『あたし、この曲大好き!』


と聞き入っていた。




そして、

『あそこには(美容理容専門学校寮)もう、戻らない、辞めるつもりだよ』

『あ、もう退学させられてるね...』

ポツリと漏らした....


『これからどうするんだ?』

と聞いたら、


『分からないけど、博巳に着いて

いくつもり、彼の事しか考えられないの』


と急に大人な顔になり

遠くを見つめていた。


『そうだな、俺も事故で入院して、

今はこんなだからな、

お互い頑張ろうな、ひろ子ちゃん』


と言ったら


『うん!』


と子供の様に笑った。


スーパーに着いて、

ひろ子ちゃんは、

ルンルンしながら、店に

入って行った。


『ひろ子ちゃんみたいに

可愛い娘と、

スーパーで買い物なんて、

初めてだから

なんか楽しいな!』


と言ったら、


『え~変なの(笑)

でも、あたしなんかで良かったら、

嬉しいよ』


『朝から二人でスーパーで買い物したら、

博巳には悪いけどカップルに見えるかな?』


『アハハハ!おっかしい』

と笑いながら、サンドイッチや、

ジュースを買って、

緑が良く映えた公園のベンチに座って、


『starressさんは信用出来る人ね、

博巳の言う通りだった、

出会えて良かった』


『そうだろ~いつもいい人で終わってるよ』


『まったく~そう言う意味じゃないよ!』

とまた、天使の笑顔でケラケラ笑った。


『いい天気だな~』


『いい天気ね』


明るい陽射しを浴びながら、

この娘が家出少女で、

今、各地を転々としている事など、

忘れさせるくらい

柔らかな瞬間だった。


゛友だちの彼女だから、

今はしっかり守ってやるよ。゛


そう思いながら、ひろ子を見つめていた。


夕方に博巳は迎えに来たよ。

もっと泊めさせてもらえないか?

と頼まれたけど、

自分の家族の事もあるので、

これ以上は無理だと断るしかなかった。


博巳は

『ひろ子が大好きで、初めて

結ばれた時の彼女の、

体はとても綺麗で本気で

好きだと思ったよ、

ひろ子しか考えられないんだ』

『あいしてるから、

博巳のお○んちん食べたいって

言われたけど、まだ待ってくれと

ビックリして断ってしまったよ』


『でも今晩たべられそうだよ.....』


『そっか良かったな、羨ましいよ、

彼女16なのに、大人びて

可愛いもんな。

しかし、いいな~

俺も言われてみたいよ(笑)

ま、影ながら応援するよ、頑張れよ!』


ひろ子も


『ありがとうstarressさん』 


と半分涙を浮かべていた。


二人はいばらの道だと思うが、

これからどうするのだろうか...

と先が見えない二人が乗った

黒いセドリックが、

走り去って行った。


それから1ヶ月、博巳はひろ子と

別れたと言った。

もう他の男と付き合ってるらしい....


とあるショッピングセンターで、

他の男と車に乗ったひろ子が、

駐車場で大きな声で俺の名前を呼んで、

手を振っていた。


19の俺は、ひろ子と博巳はあんなに

愛を誓いあったのに、

なんでこんなにあっさりと

他の男と仲良く、

俺の前に現れて来るの?

と怒りしかなかった。

だから、どんなに手を振られても、

俺は一切反応しなかったし、

徹底して無視した。

あの頃の俺はそんな、

ひろ子が許せなかった。

一生懸命手を振っていた

ひろ子だったが、

段々その手がゆっくりと、

下に下がって来て悲しい顔を

していた様だった。

隣の知らない男は、黙ってそれを見ていた。

 

ひろ子とはそれっきりで、

もう2度と会うことはなかった。


19歳の俺は、かたくなで

そんなひろ子と話すのは、

博巳への友情を否定する様で

受け入れる気持ちなど、毛頭なかった。


何年かして、何故あの時

ひろ子を無視してしまったんだろうか....

男と女、それぞれ事情があるだろうにな....

博巳が見切りを付けたのかもしれないし

ひろ子は失踪して生きる為には

男に依存するしかなかったのだろう。

だから、無視しないで

優しくしてあげるべきだったと、

後悔した....