大映特撮映画三部作 東海道お化け道中
●妖怪ブームの背景(大映特撮映画大全より)
怪獣への熱狂が冷め始めた子供達が
次に夢中になったのは妖怪だった。
きっかけは水木しげるのマンガを
テレビドラマ&アニメ化した作品群。
中でも妖怪ブームを決定づけたのは
1968年1月に放送が始まった
『ゲゲゲの鬼太郎』だ。
流行をいち早く察知した大映京都は
同年3月に本格的な妖怪映画
『妖怪百物語』を公開した。
妖怪達は怖い物ばかりではなく、
バリエーションに富んだ妖怪が次から
次へと登場する演出が心憎い。
襖や壁に描いた絵が本物になる。
""から傘"やどこかキュートな"油すまし"
などのキャラはアイドル的な存在になった。
オンエア中の『ゲゲゲの鬼太郎』は
まだモノクロの時代。
当時の子供達はカラーで実体化した
妖怪が動き回る初めて目の当たりに
したのだ。
まさに水木しげるの絵から飛び出した
様な生き生きとした妖怪造形こそが
本作品の真骨頂だった。
●特撮は『大魔人三部作』に続き
黒田義之が担当。
シンプルな技術が多いが、注目すべき
物を幾つか挙げておこう。
道に迷った旅人などに突然抱きつく
ぎょろりとした目の巨体な妖怪
『土ころび』は目や首、手足を動かす為に
着ぐるみに、入って3人がかりで
動かしている。
空中を、浮遊する"狂骨"は操演に
依るもので、背の低い"油すまし"や
""ひょうすべ"のスーツアクターは
子供だった。
"から傘"が絵から抜け出して愉快に
踊るシーンは鷲巣富雄率いる
ビープロが担当している。
悪徳奉行や強欲商人を懲らしめる
妖怪達は最後を見届けると、
棺を担いで、夜の闇に消えて行く。
百鬼夜行を実体化した多重合成が
素晴らしい‼️
●ダイモンの着ぐるみの中から鋭い眼光を
放っているのは、『大魔人三部作』を
支えたスーツアクター橋本力。
大魔神もそうだが、身体の1部を露出した
妖怪たちには、全身を着ぐるみで覆われた怪獣にはない畏怖や恐怖が宿っている。
日本の妖怪は更に擬人化され、
関西弁の油すましを初め、東北弁の
ろくろ首、陽気で間抜けな江戸っ子気質の、
"河童"、妖艶な"2面女"、お腹でダイモンの
分身を見破る"雲外鏡"、血気盛んな
"青坊主"、九州弁で寂しげな、"ぬっぺぽう"
などなど、怪しさや怖さよりも
ヒーローとしての愛らしさや面白さが
強調された。
●シリーズ第3弾、翌69年制作の
『東海道お化け道中』監督安田公義、
黒田義之、ではガラリとタッチが変わった。
股旅ものをベースに任侠映画の
味わいさえ盛り込んで、正統派
時代劇に妖怪物の要素を若干加味した
作りなのだ。
そこには移り気の早い子供達よりも
大人向けの娯楽映画へ回帰しようと言う
狙いも垣間見える。
妖怪達の造形は不気味かつ愛らしく
"ぬらりひょん"、"狂骨"、"蛇骨婆"、
"百々爺"、"土ころび"、らがドラマを
盛り上げる。妖怪軍団と人間の生首が、
悪人を襲う
クライマックスの特撮はさすがに
禍々しい。
しかし本作以降、映画の中の妖怪
達は、永き眠りにつくことになる。
●東海道お化け道中ストーリー
1969年日本映画。やくざ同士の殺し合いを、
妖怪があつまる鬼塚でやってしまった
ため、殺した一家が妖怪たちに
呪われる話です。
子供向けのような作品ですが、
ストーリーは妖怪映画というよりも
時代劇映画と呼んだ方がいい内容です。
監督:安田公義、黒田義之
出演者:
●本郷功次郎(百太郎)
映画
『講道館に陽は上る』
『大菩薩峠』
『釈迦』
『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』
『大魔神怒る』
『空手バカ一代』
等多数出演
●保積ペペ(新太)
●映画
脅迫 おどし(1966年) - 正夫
ザ・タイガース 世界はボクらを待っている
(1968年) - 唯
東海道お化け道中(1969年、大映) - 新太
幕末(1970年) - 佐市
飛び出せ!青春(1973年) - 山本大作
ご存知!ふんどし頭巾(1997年) - アイダ
金田一少年の事件簿 上海魚人伝説 (1997年) - 小林哲治
いつかA列車に乗って(2003年)
七人の弔(2004年) - 西山政彦
佐賀のがばいばあちゃん(2006年)
海でのはなし。(2006年)
日本沈没(2006年)等多数
●古城門昌美(お美代)
●戸浦六宏(賽吉)
1930-93年、大阪府出身。
京都大学の劇団「風波」で活動。
卒業後、教師を経て、60年、
『太陽の墓場』で映画デビュー。
主な出演作に、ドラマ『新選組始末記』
『ザ・ガードマン』『キイハンター』
『野性の証明』、映画『儀式』
『竹山ひとり旅』『動乱』
『戦場のメリークリスマス』など。
NHKでは、大河ドラマ『赤穂浪士』
『太閤記』『天と地と』『勝海舟』
『徳川家康』、連続テレビ小説
『おはなはん』『雲のじゅうたん』
『マー姉ちゃん』、『新 夢千代日記』
『真田太平記』などに出演。
●五味龍太郎(俵権九郎)
1956年~より活躍
妖怪百物語(1968年、大映) - 堀田豊前守
眠狂四郎人肌蜘蛛(1968年、大映) - 田付十郎次
二匹の用心棒 (1968年、大映)
座頭市喧嘩太鼓(1968年、大映) - 明神の佐七
関東おんな極道(1969年、大映) - 早田卓次
関東おんな悪名 (1969年、大映)
東海道お化け道中(1969年、大映) - 俵権九郎
鬼の棲む館(1969年、大映) - 武将
悪名一番勝負(1969年、大映) - 作次郎
眠狂四郎円月殺法 (1969年、大映)
笹笛お紋(1969年)
座頭市と用心棒(1970年、大映) - 小仏一家の常
透明剣士(1970年、大映) - 岩尾勘十
あぶく銭(1970年、大映) - 舟辰
賞金首 一瞬八人斬り(1972年、東映) - 悪八坊
赤穂城断絶(1978年、東映) - 目付
新怪談必殺地獄少女拳 吸血ゾンビと妖怪くノ一大戦争(2009年) - 伊賀忍者の頭領 ※遺作
など多数出演。
●左卜全(甚兵衛)やめてけれ~
1949年より活躍~
奇々怪々 俺は誰だ?!(1969年) - 大薮教授
姿三四郎(1965年、東宝) - 和尚
大怪獣ガメラ(1965年、大映) - 百姓の爺さん
赤ひげ(1965年、東宝) - 入所患者
黒い賭博師 ダイスで殺せ(1965年、日活)
- 多吉老人
何処へ(1966年、東宝) - 小使
続・何処へ(1967年、東宝) - 駅長
運が良けりゃ(1966年、松竹) - 吾助
俺にさわると危ないぜ(1966年、日活)
- 百地
喜劇列車シリーズ
喜劇急行列車(1967年、松竹) - 駅長
喜劇団体列車(1967年、東映) - 老人
幕末てなもんや大騒動(1967年、宝塚映画・東宝) - 「村田屋」の佐吉
乱れ雲(1967年、東宝) - バスの老人
スクラップ集団(1967年、松竹)
- 釜ヶ崎の老人
謝国権「愛」より (秘)性と生活(1969年、東映) - 安田老人
赤毛(1969年、東宝) - 伍平爺さん
東海道お化け道中(1969年、大映)
- 甚兵衛
喜劇 一発大必勝(1969年、松竹) - 医者
俺たちの荒野(1969年、東宝)
- 労務者風の男
夜の歌謡シリーズ おんな(1969年、東映)
- ヌードスタジオの客
昭和残侠伝 唐獅子仁義(1969年、東映)
- 佐兵衛
いい湯だな全員集合!!(1969年、松竹)
- 署長
コント55号 宇宙大冒険(1969年、東宝)
- 軍事長官
男はつらいよ フーテンの寅(1970年、松竹)
- 下足番・徳爺
旅行シリーズ(松竹)
喜劇 縁結び旅行(1970年) - 大石
喜劇 開運旅行(1971年) - 爺さま
三匹の牝蜂(1970年、東映) - 爺さん
(秘)セックス恐怖症(1970年、東映)
- 中年男
喜劇 女もつらいわ(1970年、日活)
- 朝太郎
喜劇 ああ軍歌(1970年、松竹)
- 爺さん
ある兵士の賭け(1970年、石原プロ) -
ボイラーマン
ボクは五才(1970年、大映)
- 安衛門
栄光への反逆(1970年、東宝)
- 老人
喜劇 女は男のふるさとヨ
(1971年、松竹) - 鳥さん
新・ハレンチ学園
(1971年、ダイニチ映配) - アルフアタ甚兵衛
等多数出演
1970年(昭和45年)2月10日に、
劇団ひまわりの子役で構成された
「ひまわりキティーズ」を
バックコーラスに添えた
「老人と子供のポルカ」
(早川博二作曲)を発売
同曲は当初経済評論家の小汀利得が
歌う予定だったが、没案となったため、
急遽卜全が代役で歌うことになった。
これが40万枚を売り上げる大ヒットとなり、
76歳当時「史上最高齢の新人歌手」
として話題になった。
●上野山功一(五郎吉)
映画
『昼下がりの暴力』
『上を向いて歩こう』
『眠狂四郎炎情剣』
『東海道お化け道中』
『秘録長崎おんな牢』
テレビドラマ
『ザ・ガードマン』
『キイハンター』
『太陽にほえろ!』
『必殺シリーズ』
『イナズマンF』
『超神ビビューン』
●山路義人(火車の勘蔵)ほか
生年月日: 1904年9月28日 (年齢 118歳)
映画: りんどう鴉、
やくざ非情史 血の決着、
わが恋せし乙女、 大忠臣蔵、
牛若丸、 等
●東海道お化け道中
登場妖怪
●百々爺
駿河の国の妖怪。本作で初登場。
●蛇骨婆
遠江の国の妖怪。劇中では「鬼塚」の主。
本作で初登場。
●
ぬらりひょん
「大映京都妖怪三部作」すべてに登場する。
前二作までの羽織姿と違い、
粗末な着物に杖という姿。
●桂木
八つ墓山の木々の、葉の落ちた枝が人の手のようになって侵入者に絡みつく。
●火車
生首になり頭目たちを脅かす。
●土転び
八つ墓山に刃物を持って踏み入った五郎吉と紋太の前に現れる。お美代らには石灯籠に見える。
●のっぺらぼう
お美代と新太を追って八つ墓山に踏み入った五郎吉と紋太の前で、お美代と新太が眼も鼻もない顔になって現れる。
泥田坊
最後の行進では二体登場。
妖怪水車
本作初登場の妖怪。水車の周りを生首が飛び回る。火車一家の屋敷のそばに現れた。
火吹き婆
「左近の桜」に位置する妖婆。本作では火を吹く場面は無かった。立看ポスターでは主役級のアップだった。
ひょうすべ
「大映京都妖怪三部作」すべてに登場する。
●白粉婆
大映妖怪三部作」すべてに登場する
「白粉婆」役の山村嵯都子は
大映京撮出身のベテランで、
のちに原口智生監督の映像作品
『さくや妖怪伝』(2000年)
『跋扈妖怪伝 牙吉』(2003年)
当映画2作でも白粉婆を演じている。
当時70歳を越えていた山村は、
原口監督の要請に応え、
本三部作を懐かしんで嬉々として演じたという
(そんな情報知りませんでしたよ。
Wikipediaは凄い)
●青坊主
「右近の橘」に位置する妖怪忍者。
「大映京都妖怪三部作」すべてに登場する。
●一角大王
妖怪の近習頭。最後の行進にも参加。
●毛女郎
「大映京都妖怪三部作」すべてに登場する。
狂骨
人形の操演で表現された。「大映京都妖怪三部作」すべてに登場し、最後の行列では、列の周りをふわふわと漂った。
烏天狗
火車一家の屋敷に影となって現れる。
一つ目小僧
八つ墓山の墓石から変化する。
●人魂
●生首
百太郎の夢に現れる。
その他
八つ墓山の墓石が妖怪に変化する場面で、目を光らせたシルエットで現れる詳細不明の妖怪が登場する。
当時同時上映は
東海道お化け道中とガメラ対大悪獣ギロン
でした。
この後大映妖怪シリーズは
時代の流れと共に終了
してしまいました....
●(大映特撮映画大全より抜粋)
昭和44年公開の第3作目の
『東海道お化け道中』は
若干規模が縮小
されたが、股旅物に妖怪話が加わった
傑作であった。
比べて見れば
1作目の『古典的な怪談話』
2作目の『対決物』
3作目の『股旅物』
とテーマの選び方にバラエティに富む
。
大抵の子供向けシリーズは回を追う毎に
マンネリ化に陥ってしまうのだが、
この引き出しの多さこと大映京都の
実力であろう。
●妖怪シリーズが終了したのには
大きな理由があった。
同じ時期にアメリカのアポロ計画の
月面着陸が秒読みに入り、
子供たちの関心が、妖怪から宇宙や
科学に移行して行ったのである。
しかし妖怪ブームは短期間ではあったが
、大映京都の三作品が残した物は大きかった。
例えば等身大の異形の者達が超能力を
使って繰り広げる物語は
科学への興味と混じり合い、
リアルな造形と共に、
その後の変身ブームの雛型に
なっていったのである。
また妖怪人気は完全に鎮火した訳でなく
1ジャンルを確立して定着したと見て取れる。
その証拠に以降現在まで、
数年起きにブームが再燃刷るようになったのは
周知の通りだ。
その何度目かは角川の平成17年の
『妖怪大戦争』である。
同名作の
リメイク案からスタートした作品であったが、
最終的には物語、設定、CG等の
最新技術が投入され、映像的にも
隔世の感はあるが、登場する敵役が
角川書店のヒット作『帝都物語』の
加藤保憲率いる悪霊軍団と言う辺りの遊びも楽しい。
ポスト怪獣として出発した妖怪が50年以上経った今も根強い人気を持っているのも興味深い。
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