starressのブログ

日々の、出来事を何となく綴りたいと思います。

スプリットパーソナリティー⑥

睦美

美千代

由麻 と 水咲

アタル

今はこれだけの人格が睦美の中にいる。



自殺未遂を知ったのは、1ヶ月後だった。

意識不明で、救急車で運ばれて

胃の洗浄やら、点滴行い

意識が戻り、警察の事情聴取など

行動の制限、携帯電話の使用も出来ない

状況だったらしい。

睦美の兄は、家の側のファミレスに

お詫びに行き、予想外の入院費用

を支払った。

そして、睦美にその入院費用を


『きっちり返済しろ!』


と言った。


ファミレスで睡眠薬の多用を

行う辺りは、

発見されるのを想定した、

行為であろうと思われるし、

俺への当て付けなのだと思った。

だから、逃げるのなら今だろう

とあの時、思った。


しかし俺は、そのまま逃げ出す

自分は嫌だったし、今回は未遂でも

いつか本当に実行する可能性は

ゼロではないだろう。

だから、彼女にとって一区切り付けてあげるまで、付き合おうと思った。


1ヶ月後に連絡が来て、久しぶりに

会う事となった。

待ち合わせの場所で、睦美は

俺の顔を、見るなり目を伏せた。

腕には包帯は巻いてなかったし、

跡はたくさん残っていたが、

傷の無い、きれいな腕だった。


弘が言った。

『出張と言ったけど、

それは嘘で、俺を捨てて

逃げたと思っていた。』


『だから、捨てられたと思って

絶望して

気づいたら睡眠薬を飲んでいた』


と言う事だった.....




そして、舌足らずな幼児言葉で

話し始めた。



『あたしみっちゃんだよ』

『みっちゃんはごしゃい なんだよ』


幼児の人格が現れたと言う事は

よほど自分のしたことがショック

だったのだろう....

更なる現実逃避の現れだと直感した。


『そうなんだ、みっちゃんは

なにがすきなのかな?』


『みっちゃんはぱんだがしゅきだよ』



『ぱんだがかあ~いいから、

だいしゅきなの』


と楽しそうに話した。


『あれ~ぼくも、いるんたけど?』


とドラえもんみたいな話し方で

横から入って来た、男の子?がいた。


『君は?』


『ぼくは、とーくんだよ、』


と挨拶だけして消えた。


子供の人格がふたりも出来たと、

言う事は、よほど逃げ出したいの

だろうなあ.....と感じた。


確かに残された物は、兄への借金と

更なる冷徹な待遇と、無視し続ける

父親の存在だった。


『うちに帰りたくないんだよな』


弘が言う


睦美にはかなり前から、60代の巧さん

と言う、支援者がいた。

困った時に、何かと金銭的に助けて

くれてる人だった。

もちろん、その他も.....


俺も少しは助けてあげてるが、

金遣いが、荒い弘の人格に

あまり預けたくなかった。


相変わらずランクが高い喫茶店で

好き放題たべるし、お金の

大切さが分かっていない.....


手軽に手に入る方法で生活せざる

得ないから、俺は口出し

しなかった。

精神疾患なのだから、

普通に仕事など出来ないのは

みてて分かる。

親兄弟の支援無し

では、本来は生きて行けないのだ。


久しぶりに睦美本人が、

まともに現れて、一言


『かあしゃんに逢いたい...』

だった。


『お前のバイト代前借りしたり、

レイプされた時も、守って

くれなかったじゃないの?』


『でも一番話してくれて、分かって

くれたのは、かあしゃんだった』


『かあしゃんに逢いたいよ....』


確かにあの、無感覚の父親と

冷酷な神経質な兄に、同じ人間の

扱いを、受けていないのだから、

母親が死んでなければ、ここまで

酷くはなかったと言える。


睦美本人は、

涙を流してぐしゃぐしゃ

に、泣いた。


そして、


『ずっと前から、夢にかあしゃんが

出てきて、こっちを見てるの』


だった。


なんと1日も、欠かさず毎日夢に

出ているのだと言う.....


『毎年墓参りには、行ってるのか?』


と聞いてみた。


弘が出てきて


『死んでから1度も墓参りに

行った事がないんだよ』


『そうなんだ.....

それはお前の母親が

拝みに来てくれと

頼んでるんだろうと、思うよ』


多重人格と言うのは、家族には

隠しているのだと言う。

俺と精神科医にだけは人格を出し

他の知り合いの人達には、

睦美の人格を被せた

弘が会っているのだと言った。


なので、今の家族には本音が言えず、

リストカットしたり、

自分を維持するために、他の人格が

形成されて行ったのだと思う....


そんな状態だから、

『葬式にも参加するな』

と兄に言われ、

自宅にずっと居たと言うのだ。


俺は家族じゃないから、

分からないが

腕に包帯巻いて、

取り乱す妹を葬式の席に、

親戚の前に

出したく無かったんだろう...


あまりに不憫なので、


弘に


『墓参りに、行った方がいいよ

付き合ってやるから、行こう。』


『母親の霊が拝みに来て

欲しいんだと思うからな』


『いいのか?』と言うので


俺は頷いて言った....


『で、どこなんだい?』

                                と聞いたら......


『千葉だよ、千葉の八幡宿』


『ふ~ん、そうなんだ。』


『どれどれ......』


ネットで調べてみたら....



『あら......❗️遠い!』






一緒に行くと行った事、後悔したよ。