starressのブログ

日々の、出来事を何となく綴りたいと思います。

スピリットパーソナリティー⑨

睦美の中にいる人格は

美千代

由麻 と 水咲

アタル

みっちゃん

とーくん

と、睦美本人が消滅したので

7人いる


四ッ谷警察から何度も俺の携帯

に電話が、掛かって来ていた。

気づいて電話を取ったら、


『こちら、四ッ谷警察署ですが、

睦美さん、ご存知ですか?』


『あ...はい』


『売春取り締まり捜査中に、睦美さんを

検挙致しまして、今四ッ谷警察署で

取り調べ中ですが、身元引受人として

貴方の名前を、挙げているのですが

来て頂けますか?』


『え?彼女には父親と兄さんが

いるじゃないですか?そちらに

頼めば良いじゃないですか?』


『睦美さん、絶対父親と兄さんには

頼めないと言って、貴方じゃないと

絶対駄目だと言うんですよ』


『貴方じゃないとここから

動かないと言うので、

何とかお願いしますよ』


ただでさえ崩壊している家族だな...

身内に連絡したなら、兄は激怒して

精神的に追い詰めて来るだろう。

毎日、居場所もなくて苦しんでいるのに

更に立場は悪くなり、ますます

角に追いやられて

ボロ雑巾の様に扱われるん

だろうな....と言う事は容易に

想像出来た....



しかし、ここまで彼女に

付き合って来た。

ここで、彼女を見棄てる俺は

いつか後悔すると思う....

そんな馬鹿な自分がいた。

正直、彼女を愛してるかと言うと

愛と言うのとは違っていた。



彼女は多重人格と、言う特殊な個性を

持ち合わせていて、他の人なら

気味悪がって、距離を置くのだろうが、

俺はどんな精神構造をしているのか

興味深々だったので、付き合っていた。

そして他の人が経験しない事を、かなり

知ることになった....


前に客の相手は弘が、女性の振りをして

相手してるのだと言っていた。

ほんとか分からないが、

全く感じないし、むしろ苦痛だと....

だから、金の為だけだと言っていた。


俺と、知り合う前から逢っている定期の

おじさんがいるが、これまた優しい人で

なにかと彼女の力になっていた。

色んな面で彼女の金銭の協力をして

あげたり、アドバイスしてあげていて

彼氏みたいなもんだな~と感じていたが、

おじさんにも、誰にも他の人格は出した事が

無いそうだ。

あんなに援助してもらってるのに、

口が臭いし、心を許した事などないと

言っていた。


だからセックスで心から感じるのは

貴方だけだと言っていた。


そんなこんなで、彼女を愛しては

居ないが、情はある。

いつかはこの地獄から、助けてあげたい

気持ちもあった....




『聞きたいのですが、身元引受人とは....

どんな役割なのでしょうか?』


『身元引受人については...

法律上明確な定義はありませんが、

一般的には.....』


「責任をもって身柄を引き受ける人」


『ということになるでしょう。』


『典型的には、警察署に身柄を確保された人を

迎えに行き、身柄解放後に監督する人が

挙げられます。』


そして

『特に難しい事は何もありません、

ただ身柄を、引き取るだけですから』

と言っていた。


まあ、早く引き取って帰ってくれ!と

言う感じだったな...


なので、俺は行く事にしたよ。


『分かりました、では今から

行きますので』


と、伝えた。


『はい、ではお待ちしております』


と言い電話を切った。


心の中は、はあ~冗談じゃないと

思いながら、急いで準備した。

四ッ谷など行った事もない、ましてや

警察署なんて、何処にあるの?


ネットで調べて、歩を走らせた....

日差しか眩しく、目を細めながら

四ッ谷警察署の入り口から入り、

受け付けから、2階に行く様に言われた。

無機質な階段を登り2階に上がった。

そこからの通路が異様に暗くて長く感じたよ

コツコツと乾いた自分の足音だけが

響いていた。


ドアをノックして入るとそこには

何かの資料がごまんと山積みに、なっていた。


ここから遠い大きな窓越しにうつ向いて

取り調べをしている、彼女の姿が見えた。



若い刑事から、


『もう少ししたら、終わりますので

そのままお待ちください』


と言われて30分くらいだろうか.....

1時間だろうか....

彼女が、ガチャリとドアの音と共に

出てきた。


彼女は呆然として、

無機質な表情から一変して

少し目を背けてから、こちらを見た。


そして中年の刑事から、

『今回初犯なので、逮捕はしません

色々諸事情を抱えているみたいなので、

早く区の方に相談に行ってください』


『もう二度とこんな事しないように

貴方からも言ってくださいね。』


『では後は、引き渡しますからね』


『こちらにサインしてください』



身元引受人の書類に署名して、

四ッ谷警察署を出た。


『来てくれて...ありがとう..』

睦美と、言う名前の中の弘が悪そうに

言った。

『来てくれなかったら、どうしようも

なかったよ...だからホントに感謝してるよ』


半分頭に来ていたので


『本来なら、お前の兄か父親が来なきゃ

行けないんだからな!』

と俺も怒りを露にした。


『まあ、でも言えない気持ちも

分からんでもないよ.....』

とも言ったら、


目を真っ赤に腫らしていたよ。


『ホントにありがとう.....

来てくれなかったら、もうホントに

終わりだと思っていた』


アタルが出てきて


『捕まってしまったんだな、だから

もうやめろと言っていたんだ。』

『こんな事になって、済まなかった』


と改めて謝ってきた。


そして、電車に乗りしばらく走ると

多分年齢が五歳の

みっちゃんが出てきて、


『なにがあったの?

どうしてでんでんにのっているの?』


と不思議な顔になった。


由麻が出てきて


『アタルから聞いたわ、遂に捕まったのね』


『いつかこんな、日が来ると思ってた』


と他人事だった。


『俺はこれから仕事に行かなきゃならん

だから、ここでお別れだ。』


『真っ直ぐ帰れよ❗️』


と電車代を渡してここを後にした。


この件で、弘は俺への思いが強くなった

のだと言う。

そして...

多重人格同士の争いが始まる事になる。