スプリットパーソナリティー⑤
薬なのか?暗示なのか?
効果が、無くなったらしく睦美は
普通に戻っていた。
そして話しをするのはもっぱら、
弘だ。
オリジナルの人格である睦美は
殆ど出て来ない。
存在事態が、薄くなり出てきても
曖昧な事を言い、弘に代わる。
そして、感情を押さえられなくなり
新しく出た人格、水咲はあれぼど
セックスに狂っていたのに、
それは成りを潜めて、明るい20代の
語り口だった。
はしゃいだ話し方で、俺の事を
王子様~、と常に様呼ばわりするので
街中で、
『ねえ~王子様~!』
なんて言おう物なら、回りが
『え?』
と、言う感じで振り返る.....
なので、『頼むから止めてくれ』
と懇願した。
50過ぎのいい親父が、王子様だなんて
冗談じゃない。
『人前では言わないでくれ』
に変更して了承された。
声は明るいが、コンクリートの
壁を素手で、殴打して泣き叫び
今は包帯だらけの、腕をして
痛々しかった。
壁を殴ったのは弘だから、
『馬鹿なのよね~』
と、他人事の様に言う......
由麻も、『弘はおかしいのよ』
美千代も、『子供なのよね~』
と、弘の行動を非難した。
根本的な性格は弘なのだろうし、
大人しく本音を言えない?と
思われる睦美は主役の座、から
離れていて、衛星の様に回って
いる、由麻、水咲、美千代、
が理想論を語るのだと俺は
推測している。
そしてまた....
水咲の人格と身体を重ねて
『今日も、もっと激しくして!
まだ足りないわ~』
『って、言わないのか?』と聞くと
『そんな恥ずかしい事言わないで...』
と、美千代に変わり
『やっぱり私じゃないと駄目ね』
と根元を締め付ける。
俺は弘に、
『たまには、俺と寝てみるか?』
と悪戯に聞いた。
『とんでもない!俺は男だぜ』
『でも、身体はどうなんだ?』
『気持ちは男でも、女の身体でしょ?
女として感じてしまうんじゃないの?』
と俺は興味本位に駈られたのだった。
しぶしぶ了承させて、
弘の人格に入れてみた.....
『うう.....うう....』
と終始戸惑っていて、
感じてない様だったので、聞いてみたら
感じる事を拒否している様だった...
『そっか~気持ちはやはり、男なんだな』
と認識した。
『弘、すまんすまん、
誰かに代わってくれ』
弘は
『変な感じだったよ、やっぱり
遠慮しとくよ』
と言われた。
『この前みたいに、
コンクリートの壁殴ったりは、
もう止めてくれよ、流石について
行けないからな....』
と弘に念を押して、別れた。
そして
『出張で一週間戻って来ないから』
と後でメールしてから、数日後......
『俺を捨てて帰って来ないんだろ?』
とメールが来たので、
『ただの出張だから』
と相手にしなかった。
すると
行き付けのファミレスで大量の
睡眠薬を飲み込んで自殺未遂を
行い救急車で
搬送されると言う事件を、
起こしていた。
全く音信不通だったので、もう
連絡が来ないもんだと思っていたが、
まさかそんな事になっていたとは....
自殺未遂を知ったのは1ヶ月後だった。
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